ダイビングやシュノーケリングで海の生き物を観察したい方は、マンタとエイの違いを理解しておくと、より安全にマリンスポーツを楽しめるでしょう。今回はマンタとエイについて、生物としての違いや観察時の注意点を解説します。
「どこを見て判別するのか」「近づくことはできるのか」など、観察する際の重要なポイントについて理解を深めていきましょう。生態系を崩さず、自分の身を守るためにも、基本的な知識を頭に入れておくことが大切です。
目次
マンタとエイの違い
マンタとエイ、どちらも海の中を優雅に泳いでいるイメージですが、実は身体の形や泳いでいる場所が異なります。
【マンタとエイの違い】
項目 |
マンタ |
エイ |
---|---|---|
泳いでいる場所 |
海の表層や中層 |
海底 |
口の位置 |
頭の前方 |
お腹のあたり |
目の位置 |
頭部の先端 |
背中側 |
胸ビレの形 |
横に長い三角形 |
楕円形 |
エラ穴 |
|
|
なお、マンタ(ナンヨウマンタ)はエイ(オニイトマキエイ)の仲間と考えられてきましたが、2009年に別種と確認されています。
では、具体的にどのような違いがあるのか、マンタとエイの生態も含めて次項から詳しく見ていきましょう。
泳いでいる場所
マンタとエイは、同じ海の中でも泳いでいる場所に違いがあります。
泳ぐ場所の違い
- マンタ:海の表層や中層
- エイ:海底
マンタは海中のプランクトンを捕食するため、海中(表層~中層)を泳いでいます。一方、エイは貝類や甲殻類を好んで食べるので、海底を泳ぎます。つまり、ダイビングやシュノーケリング中、優雅に泳ぐ姿が見られるのは主にマンタです。
口の位置
前述したように、マンタとエイは食べ物が異なるため、口の位置にも以下のような違いがあります。
口の位置の違い
- マンタ:頭の前方
- エイ:お腹のあたり
マンタはプランクトンを食べるため、大きな口が前方についています。一方、エイは海底の生き物を食べるので、お腹のあたりに口があります。
目の位置
マンタとエイは、目の位置にも違いがあります。
目の位置の違い
- マンタ:頭部の先端
- エイ:背中側
マンタの場合、進行方向が見える前方に目がついています。一方、エイは海底を進む生物なので、外的の位置を把握できるよう背中側に目があります。
胸ビレ
マンタとエイの胸ビレは、以下のように形状が異なります。
胸ビレの違い
- マンタ:横に長い三角形
- エイ:楕円形
遊泳性物であるマンタは、大きな胸ビレを羽ばたかせるように泳ぎます。一方のエイは、海底を目立たないよう移動するため、胸ビレを波打つように動かして移動します。
それぞれ形や動かし方が異なるため、海中で見つけたときでも違いがわかりやすいです。
エラ穴
マンタ・エイともに、エラ穴はお腹側についていますが、大きさや役割に違いがあります。
エラ穴の違い
- マンタ:サイズが大きく、呼吸やプランクトンを捕食するときに使う
- エイ:サイズが小さく、呼吸のために使う
マンタは、口からプランクトンを捕食し、エラから海水を吐き出します。大量の海水を口から取り込むため、排出用のエラ穴が大きいことが特徴です。
一方、エイのエラ穴は呼吸のためについているため、サイズは小さく豆粒のような形状をしています。
エイは海底を泳いでいるので、エラ穴を目にするケースは少ないかもしれませんが、見分ける際の参考にしてみましょう。
毒があるのはマンタとエイどっち?
毒針を持っているのはエイのみで、マンタに毒性はありません。すべてのエイに毒があるわけではありませんが、アカエイやマダラトビエイには毒針があるので気をつけましょう。
とくにダイビングやシュノーケリングなどの最中は、毒針の被害に遭う恐れがあります。次項では、どのようなケースで刺されやすいのか、刺されたときの対処法などを解説します。
毒針に刺されるケース
エイの毒針に刺されるケースをご紹介します。ダイビング・シュノーケリングを始める際は、頭に入れておきましょう。
毒針に刺されるケース
- 海底の砂地に隠れたエイを踏む
- 波打ち際に潜むエイを踏む
- エイに近づいて攻撃される
エイは、擬態が上手な生き物です。砂地の中に隠れると目視できない可能性もあるため、慎重に行動してエイがいないことを確認しましょう。
また、不用意に近づくと、振り回した尻尾が手や腕に当たる恐れもあります。
海中で見つけても近づかないよう気をつけましょう。
万が一刺されたときのことを考えて、次項の対処法にも目を通しておくと安心です。
毒針に刺されたときの対処法
毒針に刺されたときは、以下の対処法を実践してみましょう。
毒針に刺されたときの対処法
- 残った毒針を慎重に取り除く
- 約45℃のお湯に患部を浸けて、毒素を中和する
- 速やかに医療機関を受診する
エイの毒針は、抜けにくい構造をしています。毒針を抜く際は慎重に行い、周囲の箇所を傷つけないようにしましょう。
また、素人だけで対処するのではなく、最寄りの医療機関を受診することも忘れてはなりません。現地スタッフにも相談し、速やかに専門医に診てもらいましょう。
マンタとエイの生息地
マンタとエイは生息地が異なり、とくにマンタは日本の一部エリアにしか出没しません。ダイビング・シュノーケリングなどで観察しに行く際は、ぜひ参考にしてみてください。
マンタが観察できるスポット
日本国内の場合、マンタは以下のスポットで観察できます。
【マンタが見られるスポット】
項目 |
内容 |
---|---|
エリア |
八重山諸島の近辺 |
時期 |
3~10月 |
沖縄の中でも、石垣島の川平石崎は「マンタスクランブル」と呼ばれる現象が見られる貴重なスポットです。マンタスクランブルとは、マンタが自分の身体についた寄生虫を他の魚に食べてもらう際の現象を指します。
大量のマンタが見られるため、ダイバーにとっての人気スポットです。
エイが観察できるスポット
エイは北海道から南日本沿岸にかけて、幅広いエリアで観察できます。中でも見応えがあるのは、千葉県の房総半島(伊豆)にあるダイビングスポットです。
このスポットでは、エイだけではなく、サメ(ドチザメ)やクエなどの魚を数百匹観察できます。遭遇率が高いため、迫力ある海を体験したい方は、千葉県の房総半島も候補に入れてみましょう。
マンタ・エイを観察するときの注意点
マンタ・エイを観察する際は、特徴の違いを踏まえた注意点も頭に入れておきましょう。生態系を崩さず、身の安全を守る上でも重要なポイントです。
マンタを観察するときの注意点
マンタを観察する際は、ストレスを与えないよう以下の注意点を守りましょう。
マンタ観察の注意点
- 大きい音を出さない
- マンタに直接触れない
- マンタを追いかけない
- マンタの根(クリーニングステーション)の上に乗らない
※マンタの根:マンタが小魚に寄生虫を取ってもらうエリア
上記の注意点は、どのダイビングスポットでも周知されています。マンタに余計なストレスを与えると、二度と同じスポットに来てもらえない恐れがあるためです。他の方に迷惑をかけないためにも、観察時の注意点は知っておきましょう。
エイを観察するときの注意点
エイを観察する際は、毒針への注意が欠かせません。「毒があるのはマンタとエイどっち?」でも解説したとおり、エイの中には尻尾に毒針を持つ種類もいます。ケガをしないためにも、以下の注意点を心得ておきましょう。
エイ観察の注意点
- 周囲の岩や砂地に手足をつく際は、エイがいないことを必ず確認する
- エイが出没するエリアでは、浅瀬であっても無暗に歩かない
- ウエットスーツなどを着用していてもエイには触らない
エイの毒針は、ビーチサンダルやウエットスーツを貫くことがあります。ダイビング中でも安全とは言い切れないため、周囲にエイがいる際は近づかないようにしましょう。
まとめ
マンタとエイは見た目が似ているものの、出没するエリアや特徴が異なります。観察する際は、生き物としての特徴を把握し、「マンタを観察するときの注意点」で解説した注意点を意識することが大切です。とくにダイビング中は、海中の生き物に近づく機会もあります。基本的な知識・技術を身につけておくと、安全かつ生態系を壊さずに楽しめるでしょう。
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