水中を泳ぐ色鮮やかな魚たちを眺めるのは、ダイビングの魅力の1つです。チョウチョウウオはダイビングでよく見られる代表的な魚です。チョウチョウウオのなかにも多くの種類があるため、それぞれの違いや特性を理解していると楽しみがより広がります。そこで今回は、チョウチョウウオの種類や撮影のポイント、おすすめのダイビングスポットについて解説します。
目次
チョウチョウウオとは
チョウチョウウオは、スズキ目チョウチョウウオ科に分類される魚類です。サンゴ礁域を中心に、世界中の温帯や熱帯の海に生息しています。日本では房総半島から南で見られることが多いです。チョウチョウウオは約10〜20cmで、目の周囲に太い黒帯と白い帯が入っている模様が特徴的です。サンゴのポリプや小型の甲殻類を食べる種類が多く、サンゴ礁域を泳ぎながらサンゴの表面をついばんで食べて生きています。
日本で見られるチョウチョウウオの種類
日本で見られるチョウチョウウオの種類は、以下のとおりです。
● トゲチョウチョウウオ
● カスミチョウチョウウオ
● セグロチョウチョウウオ
● ユウゼン
● チョウハン
● フエヤッコダイ
● ハタタテダイ
● オウギチョウチョウウオ
● シチセンチョウチョウウオ
● アミチョウチョウウオ
トゲチョウチョウウオ
茨城県以南に生息している種類です。名前のとおり背ビレにトゲのように伸びた部分があります。体長は20cm程度で、パンダのような黒線の入った目元が特徴的です。
カスミチョウチョウウオ
和歌山県以南に生息する種類です。名前は水中が霞んで見えなくなるほどの大きな群れを作ることを由来としています。体長は18cmほどで、黄色と白のコントラストが特徴的な模様があります。
セグロチョウチョウウオ
千葉以南に生息している種類です。名前のとおり背中には大きな黒い斑紋があります。20cm以上になる大型種で、幼魚のときには目を通る黒い帯があるのも特徴です。
ユウゼン
ユウゼンは日本を代表する固有種です。一見全身真っ黒に見えますが、よく見ると白い縁どりのうろこ模様があります。この模様が日本の伝統の染め物「友禅」に似ていることから、「ユウゼン」と名付けられています。ユウゼンは決まってみられるスポットがないため、希少度が高く、
生態には謎も多い種類です。
フエヤッコダイ
日本では主に伊豆半島に生息する種類です。名前のとおり長い口が特徴的です。口の先を岩の隙間に差し込んで底生生物を捕らえます。体にラインが入っておらず、黄色1色である点が他のチョウチョウウオと違う点です。体長は約18cmです。
チョウハン
千葉県以南に生息している種類です。「アライグマ」を意味する英名が名付けられているとおり、狸のような黒い帯状の模様が目を覆っています。単独またはペアで行動することが多い種類です。
ハタタテダイ
ハタタテダイは背ビレの棘が1本長く伸びているのが特徴的な種類です。ハタタテダイとムレハタタテダイと2種類が存在します。この2種類は見た目はよく似ていますが、ハタタテダイはあまり群れを作らないのに対し、ムレハタタテダイは数百尾もの群れをつくることもあります。また、ハタタテダイは南日本から琉球列島周辺に生息しますが、ムレハタタテダイは季節来遊魚として伊豆半島でもよく見られます。
オウギチョウチョウウオ
オウギチョウチョウウオは、日本では主に琉球列島に生息する種類です。体長約18cmで、体は丸みを帯びており体には黒い斜めの帯模様が入っているのが特徴です。個体数が少なく、遭遇率は低い種類です。
シチセンチョウチョウウオ
シチセンチョウチョウウオは日本では生息が少ないですが、小笠原諸島、八丈島、紀伊半島、琉球列島などで見られる種類です。体長約12cmで、目には黄色の帯が通っており、頭頂部には黒色斑があるのが特徴です。
アミチョウチョウウオ
アミチョウチョウウオは相模湾以南に生息する種類です。体長約11cmで、黄色い体に網目模様があるのが特徴です。サンゴのポリプのほかにも甲殻類などを捕食する特性があります。
チョウチョウウオを撮影するときのポイント
チョウチョウウオは動き回る被写体のため、撮影の際はいくらかの工夫が必要です。ここでは、チョウチョウウオを撮影するときの2つのポイントを解説します。
● チョウチョウウオの習性を理解する
● 撮影しやすい個体を見つける
チョウチョウウオの習性を理解する
動き回るチョウチョウウオの全身を写真に収めるには、習性を理解して撮影する必要があります。泳ぐ方向を予測してカメラを構えると、泳いでいる姿を綺麗に収められます。また、サンゴを突いているときは食事中のため、気付かれないようゆっくりと近づけば接近ショットが撮影できます。夜間ダイビングでは寝ているチョウチョウウオの姿も撮影可能です。
撮影しやすい個体を見つける
チョウチョウウオのなかにも個体によって動きの素早さに違いがあります。チョウチョウウオを見つけたときはすぐに近づかず、動きを観察するのがおすすめです。ゆっくり泳いでいたり、食事中だったりなど、比較的撮影しやすい固定を見つけて被写体を決めましょう。体の色に応じて海やイソバナなどの異なる色の背景を選ぶと、写真のコントラストも楽しめます。
チョウチョウウオに遭遇できるおすすめダイビングスポット
● 奄美大島(鹿児島県)
● 西表島(沖縄県)
● 小笠原諸島(東京都)
● 八丈島(東京都)
● 宮古島(沖縄県)
奄美大島(鹿児島県)
奄美大島は、鹿児島と沖縄の間にある日本最大級の離島です。加計呂麻島の西にあるスポット「奄美ホール」では、カスミチョウチョウウオの群れが見られます。水温が常に高く起伏に富んだ海岸線のある奄美大島は、マクロ生物の宝庫でもあります。エビ、カニ、ウミウシ、ハゼなどさまざまな生物の観察を楽しめます。
西表島(沖縄県)
西表島は沖縄の南西端にあり、100近いダイビングスポットのある島です。西表島では、カスミチョウチョウウオの群れやオウギチョウチョウウオ、シチセンチョウチョウウオが見られます。西表島は、陸の川から流れ込む栄養分や黒潮の海流により、多種多様な生物が見られる特徴があります。チョウチョウウオの他にも、トウアカクマノミやセダカカワハギ、ウミウシなど多彩なマクロ生物の姿が楽しめます。
小笠原諸島(東京都)
小笠原諸島は、地形、沈船、 サンゴ礁など小さなエリアのなかに多くのダイビングスポットが詰まっている島です。初夏から夏にかけては、チョウチョウウオの幼魚を見ることができます。小笠原諸島は日本の固有種「ユウゼン」が見られる点でも特別なスポットです。夏限定のエリア「ケータ列島」や1999年より解禁になった母島周辺など上級者が楽しめるスポットも数多くあります。
八丈島(東京都)
八丈島は太平洋に浮かぶ黒潮の影響が色濃く、八丈ブルーと呼ばれる海の美しさが特徴的なスポットです。八丈島も小笠原諸島と並んで「ユウゼン」が見られる特別なスポットです。春と秋には「ユウゼン玉」と呼ばれる群れが見られることもあります。その他にもシンジュアナゴやハチジョウタツなど、八丈島ならではの生物を楽しめます。
宮古島(沖縄県)
宮古島は7kmにも及ぶ「与那覇前浜ビーチ」が有名な島です。宮古島ではアミチョウチョウウオを見ることができます。アミチョウチョウウオは、水深15mほどのサンゴ礁地帯に生息しており、他のチョウチョウウオより個体数が少ないレアな種類です。宮古島は透明度が高く栄養豊富な海域なため、本土沿岸の海であまり見ない珍しい生物にも遭遇できるスポットです。
色鮮やかなチョウチョウウオの魅力を楽しもう!
チョウチョウウオは、サンゴ礁域を中心に世界中の温帯や熱帯の海に生息している魚です。チョウチョウウオには多彩な種類があり、独特な模様や体の形状の違いを楽しめます。小笠原諸島や八丈島で見られる日本の固有種「ユウゼン」も一度は見ておきたい魚です。チョウチョウウオの綺麗な写真を撮るためには、習性を理解したり撮りやすい個体を選んだりするのがポイントです。
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